いし づち やま
海量 法師
1733 〜 1817


えん ゆう せん てん がいわた

なん さん せん こう なな めなり

ひといし づちさん しょく こす

しゅん さん がつ ゆき はなごと
遠遊千里度天涯

南豫山川行路斜

獨有石鎚山色起

暮春三月雪如花

(通 釈)
千里の遠くまで旅をし、天涯の地に来た。ここ南予の山は切りたち、川はめぐって、道は斜めに続いている。
ただ、石鎚山だけが素晴らしい山の景色を表している。晩春の三月だというのに花のように雪が舞い降っているのだ。

○遠遊==遠隔の地まで旅をする事。
○千里==千里もある遠いところ。
○天涯==非常に遠いところ。   ○南予==南伊予の略。
○行路==旅路。 ○山色==山の景色、山光。
○暮春==春の末。


(解 説)
この詩は、四国の最高峰石鎚山に来てその情景を詠ったものである。
石鎚山脈は、四国の東半の剣山地に対する西半の主体となる山々である。その中心部が石鎚山で、西条市、周桑郡小松町、上浮穴郡面河村境に位置し、標高は1982メートルある。
詩歌には伊予の高嶺としてよく詠われるが、この詩も、その一つである。
(鑑 賞)
起・承句で、遠い南予の地形の険しさを詠い、転・結句で石鎚山の雪景色を詠っている。
全て叙景である。晩春の三月、南国の四国であれば雪など降る場面ではないが、ここ石土山はさすがに高峰だけあって雪が舞う。それを雪が花のように、といったところに春の明るさも感ぜられるのだ。
なお、結句の情景を、いま雪が降っているととらないで、残雪が山肌を彩っている、と解する説もあるが、それでは 「雪花の如し」 の表現が死んでしまうだろう