(通 釈) 奥深くもの静かな竹薮の中に、私はただひとり坐して、琴を弾いたり、また声を長く引いて詩をうたったりしている。 深い林のこととて誰も知らないが、天井の明月だけは、この林の奥まで月光を差し込んで、私を照らしてくれている。
○竹里館==竹林の中にある離れ座敷の名。王維の所有になる?川荘 (モウセンソウ) の中にある二十景の一つ。 ○幽篁裏==奥深く静かな竹薮の中。 ○長嘯== 「嘯」 はウソブクといい、口をすぼめて声を出すことであるが、ここは、口をすぼめて声を長く引いて詩をうたうこと。 ○深林人不知==琴を弾いたり、詩をうたったりする深林の中の楽しさを誰も知らない。明月だけが、この楽しさを知っている。