(通 釈) この吉野山に来て見ると、 「一目千本」 といわれるように、多くの桜の木が満開の花をつけ、目の前はただ雪におおわれたように真っ白である。 ふと人の話し声が聞こえてくるが、さて、どこにいるのか見当がつかない。それは香しい雲の中から出てくるのである。
○一目千秋==桜の木の多い状態を示す。 吉野山には、役行者によって桜が神木とされて以来、多くの信者によって献木され、下の千本・中の千本・奥の千本などの名所が生まれ、それを見る 「一目千本」 といわれる所もある。ここでは、どの千本と特定せず全体を一目に千株も見えるほど桜の木が多いといっているのである。 ○満前==前方一面に。満地と同じように用いる。 ○皚皚==桜の花が霜や雪のように白いこと。 ○人語==人の話し声 ○香雲==香しい雲。満開の桜の花をいう。 ○団裏==かたまりの中。