うみのぞ
藤井 竹外


鵬際ほうさい ひらきゅう まんてん

じんしまさだ めていず れのへん なる

かぜきょう ろう ほん ごと

たちまざん しょうくだ けてけむり
鵬際晴開九萬天

無人之島定何邊

追風狂浪如奔馬

忽觸巉礁碎作煙

(通 釈)
はるか水平線のあたり、水と空とがどこまでも連なる。いったい、無人島はどこにあるのだろうか。
風を追うかに見える荒れ狂う波は、奔馬のような勢いで海面を渡って来て、不意に暗礁にぶつかって砕け散り、一瞬、煙のようになる。

○鵬際==遠く際限のない彼方。水平線のこと。
○九万天==極めて遠いことをいう。
○無人之島==人のいない島。
○定==疑問詞 (この場合は 「何」) の前について、 「いったい〜〜だろうか」 の意。
○狂浪==荒れ狂う浪。
○奔馬==勢いよく走る馬。
○巉礁==水面すれすれにある切りきった岩。


(解 説)
荒海に臨んで作られた詩である。
茫々たる水平線のあたりは果てしなく、荒れ狂う波は岩に当って砕ける。海の大きさ、力強さを描いている。
(鑑 賞)
起句から結句に至るまで、視線は句を逐って近くなり、同時に、静から動へとダイナミックに展開される。
色彩も、青い空と海、黒い岩、白い波頭と鮮やかに描かれ、あたかも、大幅の画面を眼前に置いたようである。
注目すべきは、表面には見えない 「無人島」 をさすことより、とりとめない広がりに焦点が据えられる効果をもたらしていることだ。
起句の茫漠たる表現も、このために迫力を加えているのに気づくだろう。