古いみささぎの松や柏は、吹きわたるつむじ風に、はげしい音を立てている。 私はこの山の寺院の春の景色を尋ねて来たのであったが、境内には春を探る人影もなく、ひっそりとしてまことに物寂しい。 ただ、真っ白い眉の老僧が一人、庭を掃くその手を止めて、散りしきる花びらの中で、南朝について説き聞かせてくれるのである。