木蘭や芙蓉の花が一杯に咲いて、芳しい香りが中州一面に満ち満ちている。
この芳洲はその昔、白雲に乗じて、北渚に来たり遊んだ帝子に、木蘭芙蓉のように美しく貞淑な湘婦人が思慕を馳せたところである。
当時から今に至るまで天帝の都は、はるか遠くへ隔たったままである。そして雲の去来も同じく変わることなく空しく眺められるばかりである。
ゲン水の上を冷ややかな秋風が流れ、冴えわたる秋の月は水の面を白く照らしている。波の上には、冷たい靄が薄絹のように長くかかっている。
九疑山は高く聳えて猿の啼声が悲しく聞こえてくる。
湘妃の涙が葉の模様となったという竹の枝から、消え残りの露が音もなく地に落ちている。
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