青々とした十里に亘る山々が、ふかみどりの湖に影を落として、この湖の辺りの風景はそのまま絵に描くことは難しい。 夕陽をあびたあばら家で、人々は買った酒を酌み交わし、あるいは、やがて昇った明月に照らされながら、小さな橋のあたりで、釣り糸をたれたりする人々も居る。 以前、この湖の辺、竹の林に囲まれていたところに草葺の庵うぃ作ったときには、近所の老農に畑仕事の手ほどきを受けたのであった。 いつか役人を辞めた後には、此処に住み着いて、興のおもむくままに、小舟にでも乗りたいものだと思うのである。