ふね こういた
吉村 寅太郎
天保八 (1837) 〜 文久三 (1863)
囘首蒼茫浪速城

篷窗又聽杜鵑聲

丹心一片人知否

不夢家郷夢帝郷
こうべめぐら せば蒼茫そうぼう たりなに しろ
篷窗ほうそう また けんこえ
丹心たんしん いっ ぺん ひと るやいな
きょうゆめ みずてい きょうゆめ

見返れば大阪城はぼんやりと朧に霞かすみ、舟の窓近く聞こえるほととぎすの声に思いは沈むばかりである。
自分は今帝都ののみ気になり、夢にも家郷のことは見ず帝都のことのみ見るのであるが、この一片の真心を人は知ってくれるであろうか。