宮殿の見事なうてな、美しい門のあたりに、時は静かに過ぎて、夜はいよいよ深くなってきた。
今日は宿直で、独り翰林院に居り、親友である君の身を思っている。
今夜は八月十五夜である。色も鮮やかに新しい光を放って上って来た月を見ていると、二千里もの遠陽地に左遷され、ひとり不遇な状態にある君が思い出されてならない。
今、こちらの宮中の清宮の東の方は、うすもやがけぶって、波が冷ややかに打ち寄せ、浴殿の西の辺りには、時を報ずる鐘の音が、更け行く夜にものさびしく聞こえている。
気がかりなのは、今夜この明月を、自分が此処で見るのと同じように、清く美しく眺められないでいることであろう。なぜなら、君の住む江陵の地は、土地が低く湿気も多く、秋曇りの日が多いということだから。
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