姑蘇台の上に書いた風が吹き抜けてゆく。
旅の私は、日暮れ時にこの台に登ったのである。
台より見わたせば、多くの鹿が群れをなして遊んでいるのは、昔のままのようであるが、華やかであった筈の姑蘇台の面影は全く見当たらない。
しかも千里も遠く続く川と山とは、すべて他国のものとなってしまっているのである。
かって呉の忠臣伍子胥は、悪人太宰ヒの謗りにあい、呉王夫差から名剣屬鏤を賜って自殺した。
越王は二十年間復習の為の準備をして、ついに越は呉を討つために姑蔑に旗を揚げ、呉の諸将をして愁え看せしめたのである。。
台上から更にふり返って見れば、夫差の父闔閭が華やかに遊猟楽しんだ長洲苑の古跡外の、まばらに生えている樹木も往時とは似ても似づかず、まことに寂しい光景である。
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