琵琶湖上に舟を浮かべて遠く見渡せば、湖北も湖南も一様に夕暮れの気配が深い。 こうした中で棹を止めて、唐崎の松はどの辺りかと見まわすが定かではない。 青い波の寄せる両岸には、はや秋風が起こり、其の風ののって、雲にかくれた比叡山でつき鳴らす鐘の音が聞こえてくる。