春の夜、宮中に宿直して夜も更けると、黄金の香炉の香も燃え尽き、水時計の音もわびしい感じである。 薄ら寒い風がひとしきり、吹いてきては止み、止んではまた吹いてくる。 春の夜のたたずまいはわたしを悩ませてなかなか寝つかれない。 月が移って今まで見えなかった花の影が欄干の上に現れて来た。」