桃花開き、水もぬるんで量を増し、自分の乗る小舟を勢いよく流してくれる。 ふつ振り向いてみると、折りしも一羽の雁が空の彼方に消え去ろうとしている。 その彼方に比良の峰が高く聳え、一角には残雪が白く見える。 こちらでは暖かいというのに、江州には未だ春風が訪れていないのであろう。