ちょう でん こうくだ
藤井 竹外
文化四 (1807) 〜 慶応二 (1866)

桃花水暖送輕舟

背指孤鴻欲没頭

雪白比良山一角

春風猶未到江州
とう みず あたた かにしてけい しゅうおく
はい こう ぼつ せんとほつ するのほとり
ゆきしろ さんいっ かく
しゅん ぷう なお いまごう しゅういた らず

桃花開き、水もぬるんで量を増し、自分の乗る小舟を勢いよく流してくれる。
ふつ振り向いてみると、折りしも一羽の雁が空の彼方に消え去ろうとしている。
その彼方に比良の峰が高く聳え、一角には残雪が白く見える。
こちらでは暖かいというのに、江州には未だ春風が訪れていないのであろう。