じゅつ かい
蒲生 君平
明和五 (1768) 〜 文化十 (1813)

丈夫生有四方志

千里劍書何處尋

身任轉蓬無遠近

思随流水幾浮沈

笑對樽酒興先發

泣讀離騒醉後吟

唯頼太平恩澤渥

自將章句托青衿
じょう うま れて ほうこころざし
せん 剣書けんしょ いず れえのところ にかたず ねん
転蓬てんぽうまか せて遠近えんきん
おも いはりゅうすいしたが っていく ちん
わら ってそん しゅたい してきょう はつ
いて そう んですい ぎん
ただ 太平たいへい恩沢おんたく あつ きにたよ
みずかしょう って青衿せいきんたく

男子たるもの、生まれながらにして、国家のために活躍しようという志がある。
さて、剣と書をたずさえて文武の道を極むべく、千里の彼方のどこに求めようか。
自分は風に吹かれて飛び行く蓬のように、落ちぶれてあちらこちらとさ迷ったこともあるし、また、心も流れる水のように、幾度も迷ったことがある。
時には酒樽を前にして打ち興じたこともあし、時には屈原の 「離騒の賦」 を読んで、その心情に打たれて、酒に酔い泣きながら吟じたこともある。
然し今は、太平の世のおかげで、屈原のように死をもって人に訴える必要も無いので、文章を綴り、それをもって青年達に自分の志を継がせようとしているのである。