しん おう はっ けい
木村 岳風
明治三十二 (1899) 〜 昭和二十七 (1952)

瀬田唐橋石山寺

名勝舊跡靜流隣

比叡樹木霞煙雨

雄松白汀凉風淳

古城月明彦根夕

新雪觀大賎嶽晨

深緑影沈竹生島

海津大崎岩礁珍

安土展望八幡景

水郷情趣漲此濱
唐橋からはし 石山いしやま でら

めい
しょう きゅう せき せい りゅう ちか

えい樹林じゅりん えん かす

まつ白汀はくてい りょう ふう きよ

じょう つきあき らかなりひこ ゆうべ

新雪
しんせつ
かんだい なりしずたけあした

しん
りょくかげしずちく しま

かい
大崎おおさき がん しょう めず らし

づち展望てんぼう 八幡はちまんけい

水郷
すいごう
じょう しゅ はまみなぎ

夕日に映える瀬田の唐橋は瀬田川の清流にかかり、石山寺をはじめ名勝・旧跡が此の近くにある。
春の比叡山の樹林は煙雨に霞んで絵のようであり、夏、雄松崎の白汀には湖上からの涼風が吹き寄せて真に心地よい。
秋の明月は彦根の古城に映えて幽趣を漂わせ、冬、湖北賎ヶ岳に新雪の降る頃、朝日をうけた景は雄大な眺めである。
また、竹生島は深緑の美しい影を湖面に漂わせ、海津大崎の奇岩が暁霧の中から姿を見せるときは人の目を奪わないではおかない。
更に安土山から眺める安土や八幡あたりの春景色は、水郷の美しさをこの浜に集めたかと思われる程である。