せき へき
袁 枚
清 (1716 〜 1797)

一面東風百萬軍

當年此處定三分

漢家火徳終焼賊

池上蛟龍竟得雲

江水自流秋渺渺

漁燈猶照荻紛粉

我來不共吹簫客

烏鵲寒聲静夜聞
一面いちめん東風とうふう 百万ひゃくまんぐん  当年とうねん ところ 三分さんぶんさだ
かん とく ついぞく き   じょうこう りゅう ついくも たり
江水こうすい おのずかなが れてあき びょう びょう  ぎょ とう なお らしててき 紛粉ふんぷん
われきた るやすい しょうきゃくとも にせず   じゃく寒声かんせい せい きこ こゆ

赤壁の戦いは、孫権の将、周瑜 が一面に吹きまく東風に乗じて、曹操百万の軍を撃破し、かって諸葛孔明が劉備に献じた 「天下三分に計」 は、ここ赤壁において確定された。
これは火徳の蜀漢が火攻めの策を奏効せしめて賊軍の魏を焼き尽くしたのであり、かくて池中の蛟竜といわれた劉備はついに雲を得て、天下に雄飛しようとする準備も整ったのである。
いmじゃこの戦跡を訪れてみれば、揚子江の水は昔に変わらず流れて、秋の気は遠くひろくゆきわたり、いさり火もまた変わることなく岸辺に乱れ生える荻の葉を照らしている。
あの時、この荻を火攻めの道具にしたのだったが、私の今度の舟遊びには、かの蘇東坡のように簫を吹く人を連れて来たわけでなく、それだけに、かささぎの寒々と鳴く聲を、この静かな夜に聞いて、うたた感慨に堪えなかったのである。