さん
梁川 紅蘭
文化元 (1804) 〜 明治十二 (1879) (1759) (1879)

散歩沿流水

煙微午景晴

澄潭魚有影

幽竹鳥無聲

草愛受鞋軟

風憐吹袂輕

逢花不敢咏

或恐蝶魂驚
さん 流水りゅうすい沿 う  けむり かす かにして けい
ちょう たん うおかげ り  幽竹ゆうちく とりこえ
くさ あい すればくつ けてやわら かく  かぜ あわ れめばたもと いてかろ
はな うてあええい ぜざるは  あるいおそ蝶魂ちょうこんおどろ かすを

川の流れに沿って散歩をすれば、ぼんやりと霞もたなびく、のどかな春の午後である。
澄んだふちには、魚が姿を見せ、奥深い竹やぶのあたりには、鳥のさえずりも聞こえずひっそりと静かである。
みどりいろもいとおしい若草は、踏めばいかにも柔らかく、こころよい春風は、そよそよと衣の袖をひるがえす。
美しい花をみつけながら詩を吟ずることをひかわたのは、蝶がびっくりするのを恐れたからだ。