だい
村上 佛山
文化七 (1810) 〜 明治十二 (1879)

落花紛粉雪粉粉

踏雪蹴花伏兵起

白晝斬取大臣頭

噫?時事可知耳

落花粉粉雪粉粉

或恐天下多事兆於此
らつ ふん ぷん ゆき ふんぷん
ゆきはな って伏兵ふく おこ
はく ちゅう 大臣だいじんこうべ
きのみ
らつふんぷん ゆき ふんぷん
あるおそてん ここきざ さんことを

時は万延元年三月三日、桜の花が散り雪の乱れ飛ぶ中を、突然、雪を踏み花を蹴散らして起こった伏兵の一団が、白昼に大老井伊直弼の首を斬り取ったのである。
ああ、あの権力者が、白昼に、江戸城の桜田門外で殺されたのである。
事態の容易でないことは誰にも推測しえることである。
桜の花は散りつづけ、雪もまた乱れ飛んでいるが、この事件が天下多事多端の前兆となるのではなかろうかと、恐れるのである。