春二月、都の郊外では、梅の花が一杯に咲きほころび、風を待って正に散らんとする風情である。 笛の音にいろいろな思いがあることを君は聞いて知っているだろう。 今、笛の音は軽やかな風に乗って都にまで響いてくる。笛を吹く者は、昔の物語のことなど一向に知らぬげに吹いているが、聞く者には 「三路が笛・三弄が笛」 の物語が思い起こされて、悲しみの声と聞こえるのである。