連なり続く岩山の春はひっそりと静まりかえって、梅はいま花のさかりである。
真っ白な花のなんと清らかに輝いていることか、まるで美しい白玉を積んだかのように、ロウ苑に住むという仙人の住まいも、近くあろうかとさえ思われるようすである。
昨夜はおぼろ月夜のもとで、清らかな笛の音がきこえていたが、やがて月も沈む頃にはその音もやんで、山はすっかり静まり返ったのだった。
夜が明けて戸を開いて出てみると、林に鳴くうぐいすが、声を競って愛らしく鳴きかわしている。
この美しいうぐいすの声に対しては、とるにたらぬ笛の音などは、どうして仙人の奏でる調べと比べられようか。
梅の枝をめぐって鳴き交わすうぐいすのさえずりを聞いて、しばらくの間、春の朝を楽しんだのであった。
|