ばい けいしゅん ぎょう
上 眞行
嘉永四 (1851) 〜 昭和十二 (1937)

千巖春窈窕

梅花開已饒

一白何晶潔

燦如積瓊瑤

?苑~仙宅

相隔路非遥

昨夜烟月下

玉笛劉亮飄
月落韻亦止

溪山一寂寥

清晨排戸出

林鶯
數囀嬌

?麼小簧舌

豈比仙曲調

繞枝頻嚶鳴

聊足渝春朝
千巌せんがん はる よう ちょう   ばい ひら きてせでゆたか なり
一白いつぱく なんしょう けつ なる  さん として瓊瑤けいよう むがごと
?苑ろうえん 神仙しんせんたく   あい へだ つれどみち はる かにあら
さく 烟月えんげつもと   ぎょく てき 劉亮りゅうりょう としてひるがえ
つき ちていんまた み  溪山けいざん いつ寂寥せきりょう たり
清晨せいしんおしひら きて ずれば  林鶯りんおう しばしば さえず りてなまめ かし
よう しょう こう ぜつ   あに せんやせん きょく調しらべ
えだめぐ りてしき りに嚶鳴おうめい す  いささ春朝しゅんちょうたの しむに

連なり続く岩山の春はひっそりと静まりかえって、梅はいま花のさかりである。
真っ白な花のなんと清らかに輝いていることか、まるで美しい白玉を積んだかのように、ロウ苑に住むという仙人の住まいも、近くあろうかとさえ思われるようすである。
昨夜はおぼろ月夜のもとで、清らかな笛の音がきこえていたが、やがて月も沈む頃にはその音もやんで、山はすっかり静まり返ったのだった。
夜が明けて戸を開いて出てみると、林に鳴くうぐいすが、声を競って愛らしく鳴きかわしている。
この美しいうぐいすの声に対しては、とるにたらぬ笛の音などは、どうして仙人の奏でる調べと比べられようか。
梅の枝をめぐって鳴き交わすうぐいすのさえずりを聞いて、しばらくの間、春の朝を楽しんだのであった。