さい きょくててまつ
巨勢 識人
弘仁九 (818) 頃在世

胡兒塞月曉吹笳

梅柳雖春末見花

爲報國恩不敢死

邊亭萬里老風沙
塞月さいげつ あかつきふえ
ばい りゅう はる なりといえどいまはな
国恩こくおんほう ぜんがためあえ えて せず
辺亭へんてい ばん ふう

えびすの兵士たちが、とりでにかかる月に向かって曉に吹く笛の音は、いかにも物悲しい。
世は春になったというものの、辺地の梅も柳も未だ花を開こうとはしていない。
自分は、国恩に報いんとして、都から遠く離れた荒涼たる中で老いて行くのである。