ずま きょう はん ぎ て かん
藤田 東湖
文化三 (1806) 〜安政二 (1855) (1807)

青年此地嘗遨遊

花下銀鞍月夜舟

白首孤囚何所見

滿川風雨伴?愁
青年せいねん かつ遨遊ごうゆう
銀鞍ぎんあん げつふね
白首はくしゅ しゅう なんところ
満川まんせんふう しゅうともの

かって青年時代に、此の地で馬に跨って花を賞し、秋には月下に舟を浮かべて大いに遊んだものである。
今日、老いた囚人の身となって此の地を過ぎる自分を慰めてくれるものは何もなく、隅田川一ぱいに降る雨と吹き渡る風の淋しい光景が、一層の悲しさに誘い込むのである。