春の宵の一刻は千金にも値する。 咲き乱れる花は清香を漂わせ、月はおぼろにかすんで何とも言えない風情である。 たかどのから聞こえていた歌声も笛の音も、ぶらんこのある中庭で遊んでいた女子たちの声も次第に静まり、こののどかな春の宵の一時を、夜の更けるまで、心ゆくまで楽しんでいるのである。