秋に景色は果てしなく広がって、青く美しい山々にまでおよび、白い雲は古木の枝にかかるようにたなびいて雁も姿を見せ始めた。 山荘の柿はすっかり熟れて、烏がついばみ、谷間のきのこは無数に生えて、村人の手で摘み取られる。 まちから遠く離れたところなので、ほこりがたつこともなく、林が深いために、霧が深くかかるばかりである。 もし後日、隠居の場所を求めるとするなら、比叡山を前に野川に臨んだこのあたりにしたいものだ。