げつ ひと
藤田 東湖
文化三 (1806) 〜 安政二 (1855)

金風颯颯醸群蔭

玉露摶摶滴萬林

獨坐三更天地靜

一輪明月照丹心
金風きんぷう 颯颯さつさつ 群蔭ぐんいんかも
ぎょく 摶摶たんたん 万林ばんりんしたた
どく 三更さんこう てん しず かなり
一輪いちりん明月めいげつ 丹心たんしん らす

秋風がサーッと吹きわたると、そのたびに木々の葉に置く白露がしたたり落ちて冷気を覚えさせる。
自分は幽囚の身となって、一人ここに坐しているが、真夜中はいよいよ靜である。
ただ月のみがこの幽居を尋ね、自分の曇りのない真心を照らし出して慰めてくれるのである。