しゅう
菅原 道眞
承和十二 (845) 〜 延喜三 (903)

黄萎顔色白霜頭

况復千餘里外投

昔被榮華簪組縛

今爲貶謫草莱囚

月光似鏡無明罪

風気如刀不斷愁

随見随聞皆惨憺

此秋獨作我身秋
こう 顔色がんしょく 白霜はくそうこうべ  いわん んやまた せん がいとう ずるを
むかし栄華えいが 簪組しんそばく せられ いま貶謫へんたく 草莱そうらいしゅう
月光げっこうかがみ るもつみあき らかにすること
風気ふうきかたなごと くしてうれい たず
るにしたが くにしたがみな 惨憺さんたん  あき ひと我身わがみあき

顔は黄色くやつれ、頭はすっかり白くなって、病み疲れたような姿となって、千余里も遠く離れた大宰府の地に流されてしまった。
昔はこの身も花の如く栄え、衣冠を調えて参内の毎日であったが、今は官位をさげられて流され、僻地の囚となってしまった。
月の光は鏡のように輝いているけれども、わが胸の中を照らして無罪を明らかにしてくれることはなく、また風気は刀の如く鋭利ではあるが、わが愁いを断ってはくれない。
見るに随い、聞くにしたがってみな痛ましく心を悩ませることのみである。
去年までの秋にひきかえ、今年の秋ばかりは、独り自分だけの悲しい秋となってしまった。