はん
良 寛
宝暦七 (1757) 〜 天保二 (1832)

囘首五十有餘年

人間是非一夢中

山房五月黄梅雨

半夜蕭蕭虚窓灑
こうべめぐ らせば じゅう ゆう ねん
人間じんかん いち うち
山房さんぼう がつ 黄梅こうばいあめ
はん 蕭蕭しょうしょう 虚窓きょそうそそ

ふり返ってみれば私の人生も既に五十余年が過ぎてしまった。
過ぎ去った自分も含めた人間社会のことは、是も非もすべて夢の中のことのように思われる。
自分は山の庵に住んでいる身であるが、夜半物思いにふけっていると、五月雨が物寂しく窓に降り注いで、いつまでも眠りに就くことが出来ない。