今宵は平家一門の沈んだ壇の浦に舟泊りしたが、窓を照らしていた月も沈んでしまったのになかなか眠れない。 暖かい春風が吹き、夜明け近くなった。折から漁笛が聞こえてきたが、その音は安徳帝や平家一門の恨みを込めているようであり、養和の御陵の下の海面はかすんで煙が立ち込めているようである。