どこからともなく聞こえてくる笛の音が低く尾を引くように流れてゆく。 しんしんと冷えこむ夜の陣中である。 人を悲しませずにはおかないその笛の音に、当時の兵士たちは、望郷の思いをますますつのらせたにちがいない。 この笛の主の最期を痛む思いも空しく夢路に入ったと誰が知るであろう。 今はすでに恩讐共に過去のものとなったが、この思いは益々深くなるばかりである。