黄　鶴　樓

黄（こう）　鶴（かく）　樓（ろう）
崔顥
盛唐 (704～754)

昔人已乘黄鶴去

此地空餘黄鶴樓

黄鶴一去不復返

白雲千載空悠悠

晴川歴歴漢陽樹

芳草萋萋鸚鵡洲

日暮鄕關何處是

煙波江上使人愁

昔人（せきじん）已（すで）に黄鶴（こうかく）に乗（じょう）じて去（さ）り
此（こ）の地（ち）空（むな）しく余（あま）す黄鶴楼（おうかくろう）
黄鶴（おうかく）一（ひと）たび去（さ）って復返（またかえ）らず
白雲（はくうん）千載（せんざい）空（むな）しく悠悠（ゆうゆう）
晴川（せいせん）歴歴（れきれき）たり漢陽（かんよう）の樹（じゅ）
芳草（ほうそう）萋萋（さいさい）たり鸚（おう）鵡（む）の洲（しゅう）
日（にち）暮（ぼ）鄕関（きょうかん）何（いず）れの処（ところ）か是（これ）なる
煙（えん）波（ぱ）江（こう）上（じょう）人（ひと）をして愁（うれ）えしむ

伝説によれば、昔仙人がここから黄色い鶴に乗って去ったというが、今はただその名前を取って名付けられた黄鶴楼が残っているのみである。
黄鶴はそのとき去ったまま、もはや二度と戻ってこない。ただ白い雲が千年の後の今も変わらずに悠々と流れてゆく。
晴れ上がった日の川の対岸には、はっきりと漢陽の木々が見え、さらに青々と茂った鸚鵡洲の若草も見えている。
日暮れはせまり、故郷の方を見やるのだが、あたりは川面の夕もやにつつまれて、いっそう郷愁をかきたてるばかりである。