岩 崎 谷 いわさきだにどうだい
杉 聽雨
天保六(1835)〜大正九(1920)

百戰無功半歳

首丘幸得返家山

笑儂向死如仙客

盡日洞中棋響閑
百戦功ひゃくせんこう 半歳はんさいあいだ
首丘しゅきゅう さいわいざんかえ ることを たり
わろわれ なんなん として仙客せんかくごと
尽日洞じんじつどう ちゅう きょう しずか なり

軍を起こしてから半年の間に、幾度となく戦ったが結局戦功なく、今や狐が死に際に己ががって棲んだ丘の方に首を向けて死ぬるといわれているように、私も故郷を慕って幸いに帰ってくることが出来た。
そして死に臨んでいながら、まるで仙人のように、一日中洞窟の中で陽気にパチリパチリと棋を打っている。我ながらおかしな男だと笑いたくなる。