ちく
森 春濤
文政元(1818)〜明治二十一(1888)

環郭皆山紫翠堆

夕陽人倚好樓薹

香魚欲上桃花落

三十六灣春水来
かくめぐ りて皆山みなやま にして すい うずたか
夕陽人せきようひと好楼台こうろうだい
香魚こうぎょのぼ らんとほつ してとう
さん じゅう 六湾ろくわん しゅん 水来すいきた

岐阜の街は四方が山に囲まれているが、その山々には紫や緑の山の気が浮かんでまことに美しい。
この景を一望の中に眺めようと、夕日に映える美しい楼台に上ってみた。
時は春、鮎が長良川を上ろうとしているその川面に、桃の花がひらひらと落ちていく。あの入り江この入り江にと暖かい春の水は、一気にみちあふれてくるのである。