月（げつ） 夜（や） 三（さん） 叉（さ） 江（こう） に 舟（ふね） を 泛（うか） ぶ
高野 蘭亭
宝永一 (1704) 〜 宝暦七 (1757)
三叉中斷大江秋

名月新懸萬里流

欲向碧天吹玉笛

浮雲一片落扁舟
三（さん） 叉（さ） 中断（ちゅうだん） す大江（たいこう） の秋（あき）
名月（めいげつ） 新（あらた） に懸（かか） る万（ばん） 里（り） の流（なが） れ
碧天（へきてん） に向（むか） って玉笛（ぎょくてき） を吹（ふ） かんと欲（ほっ） すれば
浮（ふ） 雲（うん） 一（いっ） 片（ぺん） 扁舟（へんしゅう） に落（お）つ

今戸川が隅田川の流れを断つように注ぐ、この三叉のあたり、秋の夜空に明るい月が新たにかかって万里の流れを照らし出している。
月の光も澄みわたった深みどりの色の夜空に向かって笛を吹こうとすると、ひとひらの白い浮雲がこの小舟に落ちてきたかのように私の目に映ったのである。