晴 月せいげつ
林 羅山
天正十一 (1583) 〜 明暦三 (1657)

武陵秋色月嬋娟

曠野平原晴快然

輾破青青無轍迹

一輪千里草連天

りょう秋色しゅうしょく月嬋娟つきせんけん
こう平原晴へいげんはれれて快然かいぜん
青青せいせいてん轍迹てっせき
一輪千いちりんせん草天くさてんつなら


武蔵野の野原の秋の景色はまことにすばらしい。
月はあでやかに美しくかがやき、野は遠く平らかにどこまでも 広がって、まことに気持ちがよい。
それは草のみどりをどこまでも敷きつらねて車の轍の迹もなく、車といえばただひとつ、まんまるい月が、空高く 千里のかなたに輝き、その光をうけてこの草原は遠い大空と、ひとつづきになっているのである。