金龍山のほとり、隅田川の水面に明るく美しい月の影が浮んでいる。 川の水のゆらぐにつれ、月の光が波の中から湧き出てきて、さながら金の龍が走ってゆくようである。 小舟は軽やかに進み、夜空は水のように清く澄みわたって、右の岸も、左の岸も秋に気配につつまれている。 その武州と総州の境を、いま舟は下ってゆくのである。