よる ぼく すいくだ
服部 南郭
天和三 (1683) 〜 宝暦九 (1759)

金龍山畔江月浮

江揺月湧金龍流

扁舟不住天如水

兩岸秋風下二州
金龍きんりゅう 山畔さんぱん 江月こうげつ うか
江揺こうゆらつき いて金龍きんりゅう 流る
扁舟へんしゅう とど まらず天水てんみずごと
両岸りょうがん秋風しゅうふう しゅうくだ

金龍山のほとり、隅田川の水面に明るく美しい月の影が浮んでいる。
川の水のゆらぐにつれ、月の光が波の中から湧き出てきて、さながら金の龍が走ってゆくようである。
小舟は軽やかに進み、夜空は水のように清く澄みわたって、右の岸も、左の岸も秋に気配につつまれている。
その武州と総州の境を、いま舟は下ってゆくのである。