晩(ばん) 秋(しゅう) 舟(しゅう) 行(こう)
市川 寛斎
寛延二(1749)〜文政三(1820)

晴江秋静遠涵天

夾岸霜楓焼晩煙

漁唱樵歌都去盡

思詩人在夕陽船
晴江秋(せいこうあき)静(しず)かにして遠(とお)く天(てん)を涵(ひた)す
岸(きし)を夾(さしはさ)みて霜楓晩煙(そうふうばんえん)に焼く
漁唱樵(ぎょしょうしょう)歌(か)都(すべ)て去(さ)り尽(つく)くし
詩(し)を思(おも)いて人(ひと) は在(あ)り夕陽(せきよう) の船(ふね)に

晴れ渡った大空の下、大川は清涼の秋の気をたたえ、青々とした水を、遠く天に届かせて大空をひたす。
岸を 夾んで茂る楓は霜に紅葉し、日暮れには、夕陽を受けて夕靄の中に燃えるばかりの美しさだ。
やがて漁夫の唱 う歌も、樵の歌う声も、すべて夕闇と共に尽きた静寂の中に、詩に心を引かれた人ひとり、夕日に赤く染まった船 にあって詩作に心をこめるのである。