続 吟 剣 詩 舞 漢 詩 集


 
長 恨 歌
白 居 易
漢皇色を重んじて傾国を思う
御宇多年求むれども得ず
楊家に女有り初めて長成す
養われて深閨に在り人いまだ識らず

天性の麗質は自ら棄て難し
一朝選ばれて君王の側に在り
眸を回らして一たび笑めば百媚生じ
六宮の粉黛顔色無し

春寒くして浴を賜う華清の池
温泉水滑らかにして凝脂を洗う
侍児扶け起こせば嬌として力無し
始めて是新に恩澤を承くるの時

姉妹兄弟皆土を列っし
憐れむ可し光彩の門戸に生まれるを
遂に天下の父母の心をして
男を産むことを重ぜず女を産むことを重んぜしむ

驪宮高き処青雲に入り
仙楽風に飄って處處に聞こゆ
緩く歌い慢やかに舞て糸竹を凝し
尽日君王看れども足らず

別れに臨みて慇懃に重ねて詞を寄す
詞中誓有り両心知る
七月七日長生殿
夜半人無く私語の時
天に在りては願くは比翼の鳥となり
地に在りては願くば連理の枝とならん
天長地久時有りて尽くるも
此の恨み綿々として絶ゆる期無からん