続 吟 剣 詩 舞 漢 詩 集


 
双 殉 行
竹添 井井
戦雲城を圧して城壊れんと欲す

   腹背敵を受けて我が軍負る

聯隊旗は臣が掌る所

   賊の為に奪わる臣が罪大なり

旅順の巨砲 千雷轟く

   骨砕け肉飛んで血雨腥し

二万の子弟吾が為に死す

   吾何の面目あって父兄に見えん

青山の馳道朱闕に連り

   万国の衣冠厳として列を成す

霊輿肅肅牛歩遲し

   金輪徐ろに輾って声咽ぶが如し

弔砲一たび響きて臣が事終る

   腹を刺し喉を絶って何ぞ従容たる

傍に蛾眉の端坐して伏する有り

   白刃三たび刺して繊手紅なり

遺書固く封じて墨痕湿う

   躬を責め世を誡め情尤も急なり

言言都て熱腸より迸る

   鬼哭し神恫み天も亦泣く

嗚呼身を以って君に殉ず臣節堅し

   生を舎てて夫に従う婦道全し

忠魂貞霊長えに散せず

   千秋万古桃山に侍す