続 吟 剣 詩 舞 漢 詩 集


 
秋 風 故 郷 の 山
明治十年如月や

 薫る梅花と純情を

競う数千の若殿原

 恩師と仰ぐ西郷が

征韓論に破れたる

 無念を汲みて隆盛を

擁して挙ぐる時の声

 まず熊本を一もみと

青春の意気天をつき

 鹿児島に行って出でけるが

あわれ戦雲つたなくて

 苦戦重ねる数ヶ月

いつしか秋のおとずれて

 友は散り行く木の葉坂

田原坂にぞ氷雨降る


追われ終われて故郷の

山辺の露と消えてゆく

嗚呼城山の夕嵐

老いたる松のしょうしょうと

人の命の儚きを

語るが如く泣く如く