続 吟 剣 詩 舞 漢 詩 集


 
講 道 館 柔 道 の 心
柔道の勝負には、 「勇気」 と 「忍耐」 の必要有り。

平素の修業に、この二コを涵養する事を努む。

柔道の修業の結果は、自から身に二コを備え、

百般の活動に表わるるに至るなり。

相手はいかなる点に勝り、又劣れるを推考し、

その周囲の事情如何を推察せざるべからず。

かくの如く自他の関係を明らかにして、

初めて我より施す手段を案出事を得るなり。

これらの事を注意する習慣は、

いかなる事業に従事するにも欠くべからざり。

これ、柔道においてこの習慣を養成するものなり。

柔道にては制情を説き、

劣情のために本心の奪われざらん事を力む。

忿怒の情の如きは最も戒むべきの一つなり。

柔道の修業に 『先』 を取れの教えあり。

又、迅速に判断を為すの必要有る事有り。

又、熟廬の後、決断断行を尊ぶ場合有り。

これら皆柔道の修業より得るものなり。

いずれも皆、

世に事業を為すに当りて貴重すべきことなり。
明治十九年、初代講道館館長 「嘉納治五郎先生」 より、
初代海軍兵学校校長 「有地品之充中将」 に宛てた書簡の中で、
講道館柔道の基本である 「修心法」 「勝負法」 「体育法」
乃ち 『心』 『技』 『体』 を説いた心の一節である。