続 吟 剣 詩 舞 漢 詩 集


吉 次 峠 戦
佐々 友房
君見ずや吉次の嶮は城よりも嶮なり

突兀空を摩して路崢

煙は籠む高瀬河邊の水

風は捲く三の嶽峰上の旌

一朝警を傳え笑って相待てば

忽ち聞く千軍萬馬の聲

なかなかに

  さやけかりけり 小夜ふけて

    仇を待つ間の 山の端の月


煙雲と為り弾は雨と為る

壯士の一命鴻毛よりも軽し

吶喊の聲は巨砲に和して響き

山叫び谷は吼え乾坤轟く

砲聲絶ゆる處松聲寂かなり

一輪の皎月陣営を照らす