続 吟 剣 詩 舞 漢 詩 集


 

松口 月城
ふるさとの

  栗もくるみもうれたれば

    おまえを思うと母の文くる


非行の少年囹圄に泣く

無限の悔恨懷まらんと欲す

噫々吾過てり

終夜眠らず独房の中

呼びたくも

  呼ぶことならぬガラス戸に

    息吹きかけて母と書くなり


頭を上げては母を憶い

枕に伏しても母

慈顔仏の如く我が瞳に浮ぶ

かくまでも

  なげきたまいぬ吾ゆえに

    日毎ふえゆく母の白髪


海嶽の恩愛今始めて識る

一輪の寒月獄窓を照らす