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『江戸漢詩選 (三) 女 流』 発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:福島 理子 ヨ リ

2008/02/07 (金) 夏 夜


    さい  こう 

へき てん みずごとよる せい りょう

つきせい れんとお りてかげ さかずき

さい しゃく ひと つもひと いた らず

いつ せんふう きゃく けい かんば
碧天如水夜清涼

月透青簾影在觴

細酌待人人不到

一繊風脚素馨香
弘化二年 (1845) の作。五十九歳。

青い空は水のように澄んですがすがしい夜、窓のすだれを透って差し込む月影が、林の中に姿をうつしている。
ちょっと一杯傾けながら人を待っているが、やって来ない。
かすかに吹き寄せた風のあと、素馨香の香りがほんのりと漂った。

○碧天如水==夜空や月光の透き通った美しさを表現して水の如しという。
○清涼==清らかで涼しい。すがすがしいこと。
○月透青簾==簾ごしにさす月影。青簾は竹や葦の簾。
○細酌==少し酒を飲むこと。
○一繊==ごくわずかな。繊は一の千万分の一を表す小数の名。
○風脚==風が通り過ぎること。
○素馨==ジャスミン。

『江戸漢詩選 (三) 女 流』 発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:福島 理子 ヨ リ