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『江戸漢詩選 (三) 女 流』 発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:福島 理子 ヨ リ

2008/01/30 (水) 春 尽

はる
    さい  こう 

かずしょう きょう けい いた るを

ぎょう ちん ちん すい

はん てん とうゆら らぐだん ちょうあめ

ことさ らにしゅん すい ってはるかえ るをおく
不聞鐘響到閨扉

暁夢沈沈臥翠幃

半点灯揺断腸雨

故将春睡送春帰
文政九年 (1826) 三月の作。四十歳。

二つの部屋の戸口にまで鐘の音が響くのを聞きはしなかった。
明けがたまでも夢にひたりつつ、縁のとばりを閉ざしてぐっすりと眠っていたのだもの。
つらいことには外は春の名残をかき消す雨、消えかかった灯火がゆらゆらと揺れている。わざと私は春眠を貪りながら、去り行く春を送っているの。

○閨扉==女性の部屋のとびら。
○暁夢==明けがたのまどろみながら見る夢。
○翠幃==みどりのカーテン。女性の寝室を表す。
○半点==なかば消えかかって少しだけともっている。

『江戸漢詩選 (三) 女 流』 発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:福島 理子 ヨ リ