春
尽
く
江
馬
細
香
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聞
かず鐘
響
閨
扉
に到
るを
暁
夢
沈
沈
翠
幃
に臥
す
半
点
灯
は揺
らぐ断
腸
の雨
故
らに春
睡
を将
って春
の帰
るを送
る |
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不聞鐘響到閨扉
暁夢沈沈臥翠幃
半点灯揺断腸雨
故将春睡送春帰 |
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文政九年 (1826) 三月の作。四十歳。
二つの部屋の戸口にまで鐘の音が響くのを聞きはしなかった。
明けがたまでも夢にひたりつつ、縁のとばりを閉ざしてぐっすりと眠っていたのだもの。
つらいことには外は春の名残をかき消す雨、消えかかった灯火がゆらゆらと揺れている。わざと私は春眠を貪りながら、去り行く春を送っているの。
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○閨扉==女性の部屋のとびら。
○暁夢==明けがたのまどろみながら見る夢。
○翠幃==みどりのカーテン。女性の寝室を表す。
○半点==なかば消えかかって少しだけともっている。
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