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『江戸漢詩選 (三) 女 流』 発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:福島 理子 ヨ リ

2008/01/29 (火) 冬夜作。時有瓶中挿梅花水仙

とう さくときへい ちゅうばい すい せん せる
    さい  こう 

しょう こうちん ちん せい なが

めい とう えい しょ しょう らす

あわ れむへい そう せいたい

ひと さだ まりこう けてあんこうがつ
小閤沈沈静夜長

微明灯影照書牀

可憐瓶裏双清態

人定更深暗合香
文政八年 (1825) 冬の作。三十九歳。

しんしんとふけ行く秋の夜、独り小部屋に過ごす身には一層長く思われる。
ほの暗い灯火の光ガ書見台を照らしている。
花瓶にさした二つの清らかな花の、何といとおしい姿。人の寝静まった夜更けに、ひそかに香りをかよい合わせている。

○小閤==閤は傍戸 (ワキド) のことであるが、小閤で小部屋を意味する。
○沈沈==夜の静まりかえるさま。
○微明==あわい光。
○書牀==書を読む台。
○双清==ふたつながら清らかなこと。
○人定==人が寝静まる。
○暗合香==暗は人知れず。合香は香りを交え合わせる。

『江戸漢詩選 (三) 女 流』 発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:福島 理子 ヨ リ