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『江戸漢詩選 (三) 女 流』 発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:福島 理子 ヨ リ

2008/01/26 (土) 冬 夜  

とう
    さい  こう

ひと しず まりてかん けい つき ろうてん

しょ ればろう せい なが

かきたよろこくれない るを

また ざん とう りて むこといく ぎょう ならん
人静寒閨月転廊

了来書課漏声長

撥炉喜見紅猶在

又剔残灯読幾行
文政三年 (1820) 冬の作。三十四歳。

静まりかえった寒い部屋、月影は巡ってわたどのの辺りへと移った。
書も決めていたところまでもう読み終えてしまって、時を刻む音がゆっくりと響く。
火桶をかきたててみると、嬉しいことに赤々と火がまだ残っていたので、また消えかけていた灯火の芯を切り、それからどれほど読み進んだことだろう。

○月転廊==廊はわたどの。
○来==動詞のあとにつく助字で、・・・・するとの意。
○書課==読むように割り当てた部分。
○漏声==水時計のしたたり落ちる音。夜更けを象徴する景物。
○撥炉喜見==炉は火炉。ここでは火桶の意であろう。
○剔==燃えつきかけた灯心を切る。

『江戸漢詩選 (三) 女 流』 発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:福島 理子 ヨ リ