冬
夜
江
馬
細
香
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人
静
まりて寒
閨
月
廊
に転
ず
書
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声
長
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行
ならん |
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人静寒閨月転廊
了来書課漏声長
撥炉喜見紅猶在
又剔残灯読幾行 |
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文政三年 (1820) 冬の作。三十四歳。
静まりかえった寒い部屋、月影は巡ってわたどのの辺りへと移った。
書も決めていたところまでもう読み終えてしまって、時を刻む音がゆっくりと響く。
火桶をかきたててみると、嬉しいことに赤々と火がまだ残っていたので、また消えかけていた灯火の芯を切り、それからどれほど読み進んだことだろう。
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○月転廊==廊はわたどの。
○来==動詞のあとにつく助字で、・・・・するとの意。
○書課==読むように割り当てた部分。
○漏声==水時計のしたたり落ちる音。夜更けを象徴する景物。
○撥炉喜見==炉は火炉。ここでは火桶の意であろう。
○剔==燃えつきかけた灯心を切る。
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