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『江戸漢詩選 (三) 女 流』 発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:福島 理子 ヨ リ

2008/01/23 (水) 拈 蓮 子 打 鴛 鴦  (戯賦楊宛宛十六艶中題 原四首節一)

れん つま みてえん おう
たわむ れによう えん えんじゅう ろく えん ちゅうだい す(もと しゅいつせつ す。)
    さい  こう 

ならならよく してりょく なり

かい せずじん かんべつ るを

たわむ れにれん しん りて じょうなげう

ぶん もとなんじしば らくあい おも わんことを
双浮双浴緑波微

不解人間有別離

戯取蓮心擲池上

分飛要汝暫相思
文政三年 (1820) の作。三十四歳。
楊宛の十六艶詩に倣って作った連作中の一つ。
楊宛宛は明代、金陵の妓女楊宛、字宛淑のこと。詩に長じていた。

つがいのおしどりが仲よく並んで浮んでは、水を浴び、その動きにつれて緑の水面がかすかに波だつ。お前たちは人の世に別れというものがあることなど知らないのでしょう。
ふと戯れに蓮の芽をとって、池の上になげてみた。別れ別れになって飛んで、相手を恋焦がれる気持ちをしばらくお前たちにも味わわせてやりたいの。

○蓮子・蓮心==蓮子ははすの実。はすの蓮房に中に入っている丸い実の中に幼芽があり、これを蓮心という。食べると苦い味がする。
○双浮双浴==おしどりの夫婦の仲むつまじい様子。
○分飛==離れ離れにに飛ぶ。

『江戸漢詩選 (三) 女 流』 発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:福島 理子 ヨ リ