偶
作
江
馬
細
香
|
|
病
に侍
して十
旬
家
を出
ず
半
檐
の新
緑
窓
紗
を掩
う
霏
微
として睡
りを引
く黄
昏
の雨
独
り屏
幃
に倚
りて落
花
を夢
む |
|
侍病十旬不出家
半檐新緑掩窓紗
霏微引睡黄昏雨
独倚屏幃夢落花 |
|
|
文政元年 (1818) の作。三十二歳。
ここ二百日ばかり看病をしていて、家を出ることがなかった。
ふと見ると、軒のなかばまで新緑の樹々が枝を広げ、窓かけを掩っている。
たそがれの時、折りしもしとしとと降る雨が眠りを誘い、独り屏風にもたれてうたたねをしていると、花のまい散る中にいる夢を見た。
|
|
○侍病==看病をすること。
○半檐==檐は屋根からふきおろしたひさし。のきば。
○窓紗==窓にかける薄絹。カーテン。
○引睡==睡けをもよおさせる。
○屏幃==ついたて。屏風の意で用いているのであろう。
|
|