家
に 帰
る
江
馬
細
香
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柔
脚新
たに霜
露
を侵
して帰
る
幽
篁
恙
無
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幃
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時
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有
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先
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牀
を掃
いて熟
衣
を裁
つ |
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柔脚新侵霜露帰
幽篁無恙映書幃
耽遊未有寒時計
先掃繍牀裁熟衣 |
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文化十四年 (1817) の作。三十一歳。
女の弱足で霜と露とを踏み分けていま帰って来たばかり。わが家の叢竹 (ムラタケ)
は少しも変わりなく、書斎のとばりにその影を写している。
私といえば遊ぶ呆けていて、冬支度を全くしていなかったので、とりあえず刺繍台のほこりを払って、冬着を仕立て始めた。
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○柔脚==女性のなよやかな足。
○侵霜露==冷たい霜や露をしのいで。
○幽篁==静かな竹やぶ。
○無恙==平安無事であること。
○映書幃==書幃は書斎のとばり。映はその姿を写す。
○繍牀==刺繍台。
○熟衣==あたたかい着物のこと。
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