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『江戸漢詩選 (三) 女 流』 発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:福島 理子 ヨ リ

2008/01/22 (火) 帰 家

いえかえ
    さい  こう 

じゅう きゃくあら たにそう おか してかえ

ゆう こう つつが しょ えい

あそ びにふけ りていまかん けい らず

しゅう しょうはら いてじゅく
柔脚新侵霜露帰

幽篁無恙映書幃

耽遊未有寒時計

先掃繍牀裁熟衣
文化十四年 (1817) の作。三十一歳。

女の弱足で霜と露とを踏み分けていま帰って来たばかり。わが家の叢竹 (ムラタケ) は少しも変わりなく、書斎のとばりにその影を写している。
私といえば遊ぶ呆けていて、冬支度を全くしていなかったので、とりあえず刺繍台のほこりを払って、冬着を仕立て始めた。

○柔脚==女性のなよやかな足。
○侵霜露==冷たい霜や露をしのいで。
○幽篁==静かな竹やぶ。
○無恙==平安無事であること。
○映書幃==書幃は書斎のとばり。映はその姿を写す。
○繍牀==刺繍台。
○熟衣==あたたかい着物のこと。

『江戸漢詩選 (三) 女 流』 発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:福島 理子 ヨ リ