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『江戸漢詩選 (三) 女 流』 発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:福島 理子 ヨ リ

2008/01/16 (火) 惜 春

はるおし し む
    さい  こう 

しょう えんほう しゅんとど むるのはかりごと

こう しょ ちょう ざんりょく しょあら たなり

たりいえ らん にして

らん ぺん はら わざるらつ ちり
小園無計住芳春

紅処凋残緑処新

贏得儂家侍児懶

欄辺不掃落花塵
文化十三年 (1816) 晩春の作。三十歳。

私の小さな庭から去ってしまおうとする、花の咲きにおう春を止めるすべもなく、紅だった花は枯れしぼんでしまい、かわりに緑の葉が生い茂りはじめた。
ただ残ったものと言えば、うちの侍女がものぐさなため、掃われぬままに欄干のあたりに散らしていた花びらばかり。

○芳春==花の美しい春。妙齢、青春をも比喩する。
○紅処==紅に咲きほころんだ花。
○緑処==樹々の緑、新緑。
○凋残==しぼみ、おとろえること。
○贏得==結局のところ〜〜だけが残ったの意。
○侍児==侍女。
○懶==怠けること。
○欄辺==欄は欄干、てすり。

『江戸漢詩選 (三) 女 流』 発行所:岩波書店 発行者:安江 良介 注者:福島 理子 ヨ リ